アヤメ。
アヤメ科の多年草で、花言葉は『良き便り』。
全国に名所が存在し、広島県府中市上下町にある安福寺もその一つとして知られている。
それはさておき、この安福寺、実は中国地方屈指の珍寺としても有名である。
六月七日、レンタカーで行ってみることにした。
TSU○AYAのCDをかけ、『お前に命を吹き込んでやる!』とばかりに時速六十キロで車を走らせた。
特にトラブルもなく、寺に到着する。
こうして遠くから見た限りでは、普通の寺だ。
珍寺にはとても見えない。
しかし異界とは得てしてそういうものだ。
私はすぐにそのことを思い知らされた。
最初にあるのがこの中国風のトイレ。
なぜか湾曲した鏡が設置されており、映るものを横長にしてしまう。
スレンダーが魅力の私は、いきなりずんぐりとした自らの姿を見せられ、予期せぬダメージを被ってしまった。
前庭のような所には、ミニ五重の塔と、アメリカンな小屋が見える。
和洋折衷どころではない。
しかしこれらは所詮軽いジャブ。
この寺のカオスっぷりはここからが本番である。
この寺の前住職は、ひょうたん和尚と呼ばれ、独自の発想でひょうたんの栽培と加工を行っていたという。
ひょうたん片手に法を説いたとの話もあり、想像するとシュールだ。
何が彼をそこまで駆り立てたのか、信用のおける資料は見つからなかった。
その他にもあまりにもリアルなHひょうたん等もあり、前住職の技術には驚かされる。
奥へ進むと、ジオラマを用いた資料館がある。
昔の暮らしと戦争についての展示があり、これらを通じて何を訴えたいのかは分かる……分かるのだが……
何だ、これは!?
展示物ははっきり言ってチープだ。
だが、異様な不気味さと脱力感があり、何とも言えない気持ちになる。
資料館を出てもまだまだネタは尽きない。
見えにくいが虹と瓦の富士山である。
とりあえず縁起の良いものを並べましたと言わんばかりに、無秩序に建てられたオブジェ達。
これら以外にも大量にあり、完全にお腹一杯。
突っ込みを入れるのにも疲れてきた。
こうして寺を見学していくと、やはりこのカオス空間を作った前住職への興味が沸いてくる。
平成八年に亡くなっているそうで、話を聞けないことが悔やまれる。
とにもかくにも、私は最後に本尊の地蔵菩薩に向かい、敬意と感謝と、突っ込みを込め、
ありがとうございました。
(薬剤科)